健康維持

これからも素晴らしい

思い出を作る礎として

在オークランド領事館
石田八郎 総領事

これまでウェリントン時代の記憶から始まっていろいろな思い出話をつづってきた。当地オークランド勤務でも、キー首相も参加したジャパンデー、しけの海での釣りタイ会、北島や南島への旅行など、日本人会やいろいろな方々のお陰で多くの思い出ができた。自然と都会の要素がうまくバランスしたこの素晴らしい地で、思い出多い充実した生活を送るには、凡庸なことではあるが、礎として健康を維持していくことが一番大事だと思う。そこで今回は、小生の失敗談を交えながら、健康維持の思い出について記してみたい。やや我田引水のきらいはあるかもしれないが、日々の生活の中での実践的な健康維持のヒントを日本人会の皆様と共有できれば誠に幸いである。

1.己を知ろう

ゴルフのスウィング矯正と同じで、人の心身には様々な経緯と特徴が備わっているはずなので、まず自分の特徴、特に健康を脅かす弱さについて十分に認識することが大事だと思う。弱さが分かれば、その次は弱さへの具体的対策を見つけることで、その後はその具体策を日々実行していくのみである。私の場合は、若いときにはやや神経質なところが胃腸に影響し下痢をしがちだったので、何とか胃腸を強くしたいと思ってきた。腹巻きは癖になりそうで短期間で止めたが、腹筋運動は快適な刺激を与えてくれる感じがあり、大学予備校時代に開始し、その他腕立てなどと共に40年以上毎日続けている。弱いところをかばうことも大事で、暴飲暴食は避け、腹八分目を心がけている。最近は殆ど下痢をしなくなったが、老年近くなり神経質ではなくなったというのが大きな理由かと思う。

2. 過ぎたるは及ばざるが如し

スポーツ一般に通じることだと思うが、やりすぎは故障に通じる。一定の負荷を継続しその負荷を感じなくなったところで、従前の1割り増しの負荷をかけるやり方をルールとしているが、何がやり過ぎなのかについては、年齢の要素もあって判断し難い。シカゴ総領事館時代の50才台。冬のシカゴは寒く長く、雪解けのグリーンでのプレイを夢見、冬場の足腰トレーニングと称して、40階建てアパート階段をエレベーター替わりにして、通勤の帰りに毎日登った。10階位から始め一割り増しルール適用で徐々に増やしていったが、30階以上となった頃から右腰に痛みを覚えるようになった。それでも続けたのが良くなかった。結果的に右腰側筋肉の腱鞘炎になり、更に悪いことに不必要な手術をしたため、3ヶ月間松葉杖の生活となり、今でも後遺症が残る。スポーツであれ健康維持の単純な運動であれ、やり過ぎには健康を失う落とし穴があることを肝に銘じておくべきである。痛さが生じたら警鐘だと思い、自分の体を思うゆとりが大事だと、今は思う。

3. 求めよ、さらば与えん

「人生はある意味で失うことの連続」と誰かが言ったことが胸に残っていて、右腰手術後、あらゆるスポーツが出来なくなった時には、その喪失感からその言葉は至言だと思った。下手ながら、これまでやってきたバレーボール、柔道、ワンゲル、ゴルフ、テニス等々のスポーツの出来ない寂しさ、出来ないことによるフラストレーションは大きかった。しかし、人には健康を求める意志が自然に備わっているのだと思う。上述の「己を知ろう」で、手術の後遺症の部位、痛さを確認しながら、いろいろ改善策を求めた。医者、本、友人、見回せばあなたの隣にも「健康オタク」はいるはずである。周りの様々な知恵を借りて、回復と矯正のための様々な体操を工夫しながら毎日行ってきた。スポーツは全て駄目かと思った時、腰への負担の少ない水泳が残されていることにも気づいた。水泳は週に1~2回公営プールに通っているが、短時間で適度の運動量、そして爽快感があり、またプール友達もできた。

4. 継続は力なり、習慣は第二の天性

自らを顧みて、自分には天性の類には恵まれなかったと思う。しかし、何か目標を立てた暁には、周囲の目を気にせずマイペースで続けるところはあったようで、それは健康維持の面では幸いだったと思う。ここまでに相当個人的なことに触れたついでに、私の健康維持のための朝のメニューを紹介させていただきたい。まず、一連の体操(現在22種類あり、約30分間。それぞれ胃腸強化、手術後の後遺症対策、一般的な腰痛対策、美味しい朝食をいただく準備、ゴルフ対策、転び防止等々の意味がある)、少量の水、冷水または乾布摩擦、散歩、朝食前の特別ジュース(玄米黒酢、すり胡麻、ロイヤルゼリー入り)、軽い朝食(ニンニク付)、お茶(梅干し、プロポリス付)、そして出勤。書いている自分が恥ずかしい思いだが、健康のためのアイディアの共有が今回の原稿の趣旨であるので、ご容赦願いたい。このような日課を行っても、仮に1日だけで終わらせた場合には殆ど意味は無いと思う。既述のように20才前で始めた腕立て伏せや腹筋運動を現在に至るまで40年間以上、その内容を微妙に変えながら続けている。不要な手術を行ったのは一生の不覚であったが、朝の体操メニュー継続のお陰で確実に健康を回復しつつある。

5. 更なる思い出のために

ニュージーランドは素晴らしいところだと思う。そこに住んでおられる日本人会の方々は大変恵まれていると思う。健康維持を常にこころがけられて、今後ともこの素晴らしいオークランドの地で充実した日々を送られることを心より祈念申し上げる。

(了)

* この原稿はオークランド日本人会2012年2月号に記載された記事に一部修正を加えたものです。