Employee(従業員)とContractor(業務委託者)について(2020年6月)

ニュージーランドのビジネスオーナーは、ビジネス拡大のために人材を必要とする場合、主に二つの選択肢があります。一つ目は、自身が雇用主となって、フルタイム、パートタイム、カジュアルなどの雇用形態でEmployee(従業員)の雇用契約を結ぶこと、二つ目は、別のビジネスオーナーをContractor(受託者)として業務委託契約を結ぶ方法があります。EmployeeとContractorは、それぞれに法的に異なる権利と義務があり、メリットとデメリットがあります。今回はこれらの違いと、Contractorとして行った業務契約がEmployeeとして判断された最近の雇用裁判所の判例について説明します。

EmployeeとContractorの違い

雇用主と雇用契約(Employment Agreement)を結んだEmployeeは、NZの雇用法による権利が保証されます。例えば、最低時給の保証、有給休暇や病気休暇、雇用主から不当な扱いを受けた場合の提訴権などが挙げられます。雇用主側には、Employeeとの雇用契約書の保管、勤怠や給与についての記録、税金の支払いなどの法的義務が課されます。

これに対して、業務契約(Contractor Agreement)の場合、雇用主(=委託者)とは雇用関係にあたらず、Contractorは受託者として結んだ自身のビジネス契約となるため、雇用法にもとづく権利の恩恵を受けることは出来ません。そして、Contractorは、業務に必要な設備や道具などは自費で購入し、基本的に成果による報酬を委託者へ請求する形で対価を得ることが出来ます。また、一つの委託者に縛られることなく、別の委託者とも自由に契約をすることが出来ますが、発生した費用や利益の管理、税金の支払いなどはすべてContractor自身で行う義務があります。委託者側は、事業を縮小する場合に、業務契約を終了することにより費用を抑えることが出来ます。

雇用裁判所の判例とその影響について

2020年5月、雇用裁判所において、運送会社(委託者)と業務委託契約を結んでいた配達ドライバーが一方的に契約を打ち切られたことに対して、自身の契約形態はContractorではなくEmployeeであると提訴し、それが認められる判決が下されました。すなわち、この判決により、運送会社と配達作業員との間の契約は、雇用関係にあるとみなされました。これにともない、配達作業員は契約日から遡って雇用法に基づいて給与や有給休暇の権利、および不当解雇に対する提訴権をも得る形となります。

裁判では幅広い事実関係と雇用法の解釈が議論されました。とりわけ、運送会社側が配達ドライバーの業務を事実上コントロールしていたことで、ビジネスオーナーであるはずのドライバーに自主的な選択権がほぼ与えられていないことが判決の主旨となりました。『事実上のコントロール』の一例を挙げると、配送ルートは運送会社が指定しておりドライバー自身では変更できない、この運送会社以外からの集荷は出来ない、ドライバー自身で勤務日を選択できない、会社の承認なくして20日以上の休暇が取れないなどがあり、総合的にこれらの制約は雇用契約に近いものと判断されました。

別のポイントとして、ドライバーの母語が英語ではないため、彼が業務契約に書かれていた不利になり得る内容を理解できていなかったという弱者の立場が考慮されたことです。本来、Contractor契約は、別々のビジネスオーナーが同等の権利を持って、契約の自由の原則に基づいて行われます。したがって、一般的に裁判所の介入は最小限とされているため、この判決は議論の余地があると考えられます。この判決を踏まえて、委託先は業務契約を結ぶ際に、契約内容の全てを説明する義務はありませんが、契約前にリーガルアドバイスを受けるべきと受託者に伝えることで、このリスクは回避できると思われます。

なお、ニュージーランド国内の運送業界では一般的にContractor契約が行われていることもあり、インパクトのある先例となりました。ただし、雇用裁判所は、今回の判決はあくまでもこの二者間の事実関係が十分に考慮された上で、Employeeとみなす結論を下しており、ニュージーランド国内すべてのドライバーがただちにEmployeeになるわけではないとも述べています。

雇用関係調停所(Employment Relations Authority:ERA)の物議を呼ぶ不当解雇を認めた判決について(雇用関係法と移民法のそれぞれの観点より)(2021年2月)

2021年2月、ERAは、Pizza HutやKFCなど大手ファストフード店などを展開する企業の元従業員(ワークビザ保持者)の不当解雇(Unjustified Dismissal)の訴えを認め、雇用主側へ慰謝料$18,000の支払いを命じました。この判決に対し、移民法を専門とする何名かの弁護士は、ERAがワークビザ申請プロセスを理解しておらず、この判決によって、今後のワークビザ保持者の雇用機会を損われる可能性があるとし、物議を呼んでいます。時系列と事実関係を整理しつつ、この判決への見解を述べたいと思います。

背景

2017年1月、従業員Gは雇用主RBLとパーマネント従業員としてワークビザのもと雇用契約を開始しました。雇用開始時、Gはオープンワークビザという雇用主に限定されない種類のワークビザを保持していました。このオープンワークビザが失効する前に、RBLのサポートによって雇用主が限定される別のワークビザ(Essential Skills: ES)に切り替え、そのまま雇用が継続されました。ESワークビザの失効日は2019年3月7日でした。

2018年11月、Gはビザの失効日が近づいてきたため、RBLに連絡を行い、お互いに雇用契約を延長の意思を確認しました。ここでのポイントとして、Gは『パーマネント従業員』という立場であることから、RBLがワークビザを必ず取得してくれる前提と思い込んでおり、ESワークビザの申請プロセスを把握していなかったようです。また、RBLもESワークビザのプロセスやそれが雇用契約にどう影響を及ぼすのか、Gに説明した事実もありませんでした。

補足ですが、雇用主がESワークビザをサポートするにあたり一番重要な作業として、サポートしたい従業員のポジションにNZ人またはNZ永住権保持者の適任者がいないかどうかを確認する作業(求人マーケットチェック)があります。これはNZ国内の雇用を優先するための国策です。したがって、ESワークビザ申請書類にNZ人の適任者がいなかった証拠を添付する必要があり、適任者がいるようであれば、ESワークビザは発行されません。

2019年1月、RBLはマーケットチェックを行い、結果、NZ人の適任者が応募してきました。RBLは適任者が見つかっているにも関わらずESワークビザ申請を行うことは、却下されることが分かっているのにビザ申請を行うことに等しく、かつG個人の申請費用が無駄になると判断し、2月14日にESワークビザのサポートが出来ない旨を電話でGへ伝えました。その後、2月19日からそのNZ人の雇用が開始され、Gはビザが切れる3月7日まで勤務しました。

Gは、パーマネント従業員として雇用されていたにもかかわらず、2019年2月14日にRBLがワークビザのサポートをやめる決定を行ったことは、不当解雇にあたると主張し、$20,000の慰謝料(精神的苦痛)の請求をERAで争うこととなりました。

ERAの判決

ERAは、RBLが雇用主として、Gとのビザ申請に関するコミュニケーションを取れていなかったこととに誠意(Good faith)を欠いていたとみなしました。そして、2月14日にワークビザのサポートを諦めて、別の従業員を雇用したことは不当解雇にあたると結論付け、$18,000の慰謝料を支払うよう命じました。

弊社の見解

この判決のポイントは、雇用関係法(Employment Relations Act)と移民法(Immigration Act)という二つの法律にまたがった雇用問題をERAがどう判断するかでした。

NZの雇用関係法において、雇用期間を定める契約は、パーマネント(Permanent)とフィックス(Fixed-term)の二つが存在します。フィックス契約としての雇用を行う場合は、法的に正当な理由が必要とされており、例えば、産休中スタッフの代理などが該当します。ただし、ビザ期限はこの正当な理由に該当しないため、一般的にパーマネント契約であることが求められています。フィックス契約では期間満了をもって雇用契約が終わりますが、パーマネント契約の場合、雇用主が従業員を自由に解雇することはできません。具体的に解雇を行う場合は、書面での通知を行い、それに対する意見を設ける期間をあたえるなど、誠意を持って一定の手順を踏まなくてはなりません。今回のERAの判決は、一貫して雇用主としての誠意ある対応ができていなかったことが強調されており、『雇用関係法の観点』からはそれほど間違った判決ではないと言えます。

しかしながら、今回のERAの判決は、『移民法の観点』において大いに問題があります。一つ目は、ERAがESワークビザの申請プロセスの実務を把握していないと思われることです。雇用主が従業員のESワークビザをサポートするためには、そのポジションにふさわしいNZ人もしくはNZ永住権保持者で適任者がいないことが前提です。雇用主は、適任者が見つかった場合、ESワークビザをサポートする理由はありません。また、従業員の要望に応じてESワークビザを申請したところで、適任者が見つかったことをわざわざ移民局に報告するだけとなり、ビザが承認される理由もありません。しかし、ERAは、RBLがGの意思を確認せず、最後まで諦めずにGのビザサポートを行わなかったことは誠意を欠いた対応と述べました。ビザ申請プロセスを理解している弁護士からすると、却下されることが決まっているESワークビザ申請は行うべきではないとアドバイスするのが妥当です。なぜなら、申請費用が無駄になることもそうですが、ビザが却下された記録は移民局のデータに残る形となり、それが将来の別のビザ申請に影響を及ぼす可能性があるためです。したがって、ERAの判決にはこういったビザプロセスの実情が考慮されていません。

二つ目は、GがESワークビザのことを理解していなかったにもかかわらず、ERAがほぼ全面的にRBL側のコミュニケーションに問題があったと述べていることです。通常、ビザは個人に帰属し、個人の責任で取得する必要があります。GはNZに法的に滞在する以上、最低限のビザに関する知識を持ち、それを分かった上で雇用契約することが当然とされます。したがって、Gはパーマネント契約ではあるものの、それはあくまでも有効なビザを自身が保持しているという、いわば条件付きであることを理解していなくてはなりません。同様に、ビザ申請プロセスの結果、雇用継続が出来なくなるリスクがあることも理解していなくてはならないはずです。事実関係から、RBLのコミュニケーション不足は否めませんが、条件付であったパーマネント契約を打ち切る決定は移民法の観点からは外れていないと言えます。しかしながら、今回のケースでは、あくまでもERAは雇用契約法寄りの判決を下す可能性が高いことが示唆されたため、雇用主は注意が必要です。

おわりに

今回のERAの判決で浮き彫りとなった雇用関係法と移民法にまたがる雇用問題ですが、法整備が求められると考えています。もともと、雇用関係法はNZ国内の雇用契約を前提として起案されたものであり、ビザ保持者の雇用契約については規定されていません。とりわけ、滞在期間の限られたビザ保持者がパーマネント契約を行うことは、雇用関係法に矛盾しているともいえます。

最後に、雇用主が出来る対策としては、まず全従業員のビザ期限を記録しておき、更新の3~4ヶ月前から話し合いの時間を設けて、雇用の継続はあくまでもビザが取得できた場合に限ること改めて説明することです。そして、もし求人マーケットチェックでNZ人もしくはNZ永住権保持者の適任者が見つかりサポートが出来ないようであれば、すぐに従業員に報告し、雇用契約はビザ期限で終了となる旨を伝えることが重要です。そして、一貫してこれらの報告や話し合いには誠意を持って対応する必要があります。

職場の健康および安全に関する法律(Health and Safety at Work Act 2015)施行後の個人責任に及ぶ判例について(2021年10月)

2016年4月4日に職場の健康および安全に関する法律(Health and Safety at Work Act 2015:HSWA法)の施行から6年が経過しました。施行後、同法上での判決ではこれまで法人のみが刑罰の対象とされておりましたが、2021年10月にはじめて個人責任にまでおよぶ判決が出ました。

予備知識として、HSWA法は以前のWork Safe法に代わって、ニュージーランド国内の職場環境における健康維持や安全管理を向上させる目的で制定されました。旧法からの変更点として、法人に対する最大罰金刑の大幅引き上げ(50万ドル→300万ドル)、また法人の監督責任者に対する個人罰(最大禁固5年、罰金60万ドル)が導入され、業務を行う個人・法人への法的な安全責任が厳しくなりました。

HSWA法においてはじめて個人責任にまでおよぶ判決の事の顛末は、プレスマシーンを取り扱う企業の従業員が操作を誤った結果、右手の指を2本失う事故が起こりました。これにより、企業側に$120,000の罰金刑および被害者への$30,000の賠償金、そして企業の取締役個人に対して$35,000の罰金刑が科せられる判決となりました。

安全監督当局(Work Safe NZ)の捜査によると、プレスマシーンに適切なガードが無く、緊急停止ボタンもついていなかった、さらに、このプレスマシーンには以前にも同様の問題が発生していたが、それを社内でリスクとして共有していなかった。そして、従業員への書面での研修記録も見当たらなかった。加えて、この企業には過去に従業員が怪我をしたことによる過去二度の有罪歴があり、安全監督当局により職場の安全性について3つの是正勧告がまさに出されていたところでした。安全監督当局は、上記の度重なる職場への安全の配慮が見直されてこなかったことを重く見て、法人だけではなく取締役個人へも起訴し、それが裁判においてはじめて認められた判例となりました。

今回の罰則の対象となった企業はプレスマシーンという特殊な機械ではあるため、この記事の読者の方には自分には関係ないと思われるかもしれません。ただ、これを皆さんの会社にある他の設備に置き換えてみると、より身近に感じるのではないかと思います。特に、製造、工場、倉庫などで勤務されている方は、客観的に周りを見ると潜在的なリスクが沢山ある事に気が付かれるはずです。そして、特に雇用主の方は、それらのリスクが認識、共有されているか、業務にかかわる全員が適切な研修を受けているか、それらが書類として保管され、マニュアル化されているか、などを今一度、ご確認することをお勧めいたします。

容姿による即日解雇通告(2022年10月)

質問

レストラン勤務の20歳です。ワーホリ生活を楽しもうと髪をグリーンに染めて出勤したところ、オーナーからそんな色だと不快と感じるお客様がいるので、常識的な容姿でなければ雇用継続は難しいと言われました。私は髪を染め直すのは嫌だと言い、話合いの末、即日解雇されてしまいました。納得がいかないので、アドバイス下さい。

回答

まず一般的に、雇用主が従業員を解雇する場合、書面通告を何度か行うなど、一定の手順が義務とされております。もし、解雇手順に誤りがあり、その事実が雇用調停所で争われて、雇用主側の不当解雇とみなされた場合、従業員へ慰謝料等を支払う決定が下されます。

この一般的な解雇手続とは別に、事前通告なしの解雇(Dismissal Without Notice)があり、今回の質問者様は、こちらに該当すると思われます。この即日解雇が正当化される主な状況は、従業員が重大な不正行為(Serious Misconduct)を行った時に限られており、これらの不正行為の種類は、多くの場合、雇用契約書に記載されています。分かりやすい例としては、暴行や窃盗などの犯罪が挙げられますが、中には社内規定に著しく違反、会社の指示に従わなかった場合なども含まれることがあります。

接客業であれば、容姿についてある程度の社内規定を設けるのは一般的で、かつ指示に従わなかったという点で、雇用主は即日解雇に至ったのではと思います。しかし、雇用主は、即日解雇を行う前に、従業員が重大な不正行為をしたか判断するためのフェアプロセスを実施する必要があります。質問者様は、解雇直前に話合いをされたようですが、即日解雇である状況のため、これがフェアプロセスであったのか疑問が残ります。加えて、髪の色について、赤はOK、緑はNGのような細かい規定を設けている会社はほとんどないと思いますので、単に雇用主の主観で緑色が相応しくないから解雇というのは、即日解雇の理由としては不適切である可能性が高いです。実際に、髪を青に染めたスーパーマーケットのパートタイム店員が容姿が原因で解雇されるケースがありました。結果、雇用主のフェアプロセスが不適切だったことが雇用調停所で明らかになり、約$10,000の慰謝料等を従業員へ支払う決定が下されています。

最後に、質問者様の対応として、ご自身もしくは弁護士などの代理人が、即日解雇の通知を受けた日から起算して90日以内に解雇が不当であったという内容の書面(メールなど)を雇用主へ送ることで、まずは今回のクレームを法的な土台にのせることができます。

COVID-19ワクチンと雇用の問題

COVID-19のワクチン接種は、雇用、労働環境での安全性や、プライバシーに問題を投げかけています。

NZでは、雇用者は労働者に対して容易にワクチン接種ができる環境を設けるように下記のように促しています。

雇用主は

  • 労働者は勤務時間内に、有給休暇の消化をしたり減給されることなくワクチン接種ができる
  • ワクチンについての国からの情報を提供する
  • Ministry of Health か a District Health Boardに職場でのワクチン接種を求められた場合、それに従う

以下で、いくつかの質問に答えます。

Q. 雇用者は労働者にワクチン接種を強制できますか?

A. いいえ。国からワクチン接種の命令がされていたりCOVID-19に感染する可能性が高い場合のみ、特別な役割をワクチン接種済の労働者に求めることができますが、このような職種はNZではまれです。

 

Q. ワクチン接種が必要な職種な場合、雇用者はワクチン接種をしていない労働者の労働条件や配置を変更することはできますか?

A. 雇用者は労働条件の変更の前に、労働者がその労働条件の変更(勤務地、時間、職務内容、感染リスクの低いポジションへの異動)に同意できるか話し合わなければいけません。また、労働者が妊娠、健康問題などでワクチン接種が不可能な場合、ワクチン接種を延期して、一時的なの代替手段に同意しなければなりません。

 

Q. もし労働者がワクチン接種を拒否した場合、雇用者は労働者を解雇できますか?

いいえ、解雇は他の解決策がない場合の最終手段です。まず、雇用者はその事業内にワクチン接種者済みの労働者でなければ遂行できない業務があるかどうかをCOVID-19感染・拡散リスクを含め判断します。そして業務の感染リスクが高く国からの接種命令がある場合、雇用者は労働者に対し、法的相談、永久的・一時的な勤務条件の変更、様々な休職種類への同意、事業体系・勤務体系の改革、心身不全による勤務不能の問題等を考慮してから解雇について考える必要があります。法的な解雇手続きと法律家による相談なしに解雇することは、雇用の機関により不当解雇と判断されて結果的に経済的に大きな打撃となり得ます。

 

Q. 雇用者は、労働者のワクチン接種が必要かどうかをどのように調べるのですか?

A. 国からワクチン接種命令が出ていないが、ワクチン接種の必要性が考えられる場合には、まず雇用者と労働者がCOVID-19の感染可能性や感染リスクを最小限に食い止める方法を話し合わなければなりません。もし「労働者が勤務中にCOVID-19に感染する可能性」が高く、なおかつ「他人に感染を拡散する可能性」が高い場合は、その業務はワクチン接種済の者によって遂行される必要性が高いです。

 

Q. ワクチン接種が必要な職種の労働者が接種をしていない場合、雇用者が労働者に年次休暇やその他の休暇の取得を要求することはできますか?

A.  年次休暇やその他の休暇の取得は双方が合意した上のものであり、雇用者が合意なしに強制はできません。もし合意が不可能な場合、まだ年次休暇の残日数があれば、雇用者は労働者に対して最低14日前の書面通達によって年次休暇の取得を要求できます。しかし、もし雇用者が労働者に対して無給休暇の取得を要求した場合は、違法に休職させているとみなされる場合があります。

 

Q. もし労働者にワクチン接種が必要な場合に、労働者がワクチン接種の証明を拒否した場合はどうすればいいですか?

A. まず、ワクチン接種するのに障害となり得ることを排除することを考えます(勤務時間外にワクチン接種するのが難しい場合等)。もし国からワクチン接種を命令されているのに、労働者が接種を拒否したり、接種の証明を拒否した場合は、その労働者はワクチン未接種者とみなされ、雇用者はその労働者に対して彼らの雇用においてそれがどういう意味かを説明する必要があります。

COVID-19 Resurgence Wage Subsidy について

8月21日

8月14日、NZ政府はオークランドのCovid-19の警戒レベルを3に、その他の地域のレベルを2に引き上げることを発表しました(8月26日未明まで)。オークランドに関しては、必要最低限の買い出しや、Essential Serviceとされる業種の人の外出除き、外出禁止(ロックダウン)となりました。ただ、最高レベル4の時とは違い、飲食店などは非接触販売(デリバリーやテイクアウェイ)の形で営業を行うことが出来ます。
8月17日、今回の2週間の警戒レベルの引き上げによりビジネスの影響を受けた雇用主向けに新たな政府補助(Resurgence Wage Subsidy)が発表されました。この政府補助は8月21日午後1時から9月3日未明(午後11時59分)まで申請することが出来ます。
Resurgence Wage Subsidyは、これまでの政府補助であるWage Subsidy(12週間)およびWage Subsidy Extension(8週間)とほぼ同様の条件となっております。まず、申請の際、雇用主が対象となる従業員の情報を当局へ提供し、その後、一括して雇用主が補助金を受け取り、各従業員へ補助金を渡す流れとなります。
Resurgence Wage Subsidyの対象となる要点を説明いたします。
1. NZ企業(NGO、Contractor、Solo Traderなど含む)であること
2. NZ国内で営業活動を行っていること
3. 従業員がNZで働く権利があること(Work Visaの承認待ちの人は対象外)
4. 売上の減収を最大限軽減する努力をしたこと
5. 2020年8月12日から9月10日の30日間のうち、14日間で2019年の同期間と比較して40%以上の売上減があること
6. 補助金を受け取っている2週間は、申請に含めた従業員の雇用を維持すること
7. 別の補助金(Wage Subsidy, Wage Subsidy Extension, Leave Support Scheme)を重複して受け取っていないこと(すなわち、Resurgence Wage Subsidyを申請する時点で、まだWage Subsidy Extensionの期間が終わっていなければ、Extensionの期間中はResurgenceの申請はできません。)
詳細は、下記のWork and IncomeのWebsiteをご確認ください。
https://www.workandincome.govt.nz/covid-19/resurgence-wage-subsidy/who-can-get-it.html#null

ワークビザ審査基準の変更について

2020年8月20日

2020年7月27日以降に申請されるワークビザについての基準について説明いたします。

a. 時給中間値による二つの基準(Higher Paid / Lower Paid)
今後、3年のワークビザを取得できるかどうかの基準は、NZ国内の時給中間値(2020年8月時点:$25.50)より多くもらっているかどうかにより審査されます。これまで、3年のワークビザの基準は$21.25以上でしたので、給与の基準がかなり上がったことになります。なお、7月26日以前までに申請されてまだ結果の出ていない分については、引き続き以前の基準で審査が継続されます。

b. ANZSCOの職業リストによる審査の廃止
これまで、申請する業種は、ANZSCOの職業リスト上での資格、実務経験年数、Job Descriptionなどが満たされるかどうかで審査されていたものが、今後ワークビザにおいてANZSCOは使用されないことになりました。ANZSCOのスキルレベル(1から5)によって、3年以上のワークビザ取得が出来ていましたが、上記で述べた通り、今後は時給中間値のみが考慮される形となります。したがて、例えば、ANZSCOレベル2に該当するシェフの場合、時給が$25.50に満たない限り、3年のビザを取得することが出来なくなってしまいます。

なお、永住権(Skilled Migrant Category)では引き続きANZSCOは審査要件として使用されます。

c. 時給中間値未満(Lower Paid)の ワークビザについて
時給中間値に満たない申請者には、本来1年のビザが発行される予定でした。しかし、今回のCOVID-19による影響の政策により、2022年1月までは最大6カ月間しか発行がされないことになったため、半年ごとの更新が必要となります。また、Lower Paidの条件のままでビザを更新し続けて3年を経過すると、一旦NZを出国しなければならず、その後12カ月間はビザを申請することが出来なくなります(Stand-down period)。

二つ目は、雇用主は時給中間値未満の職業をサポートする場合、Work and Income New Zealand (WINZ)からのSkills Match Reportの提出が必須となります。以前は、ANZSCOのレベル4と5に該当する職業のみ必要とされていました。

三つ目は、Lower Paidのワークビザ保持者であっても、パートナーの観光ビザをサポート出来るようになりました。ただし、パートナーのワークビザをサポートするためには、Higher Paidの条件が必要となります。また子供については、時給が中間値未満であっても年収$43,322.76以上があれば、Dependent Childrenとして申請に含めることが出来ます。

COVID-19に対応する移民法修正法案について

2020年5月8日

NZ政府は、2020年5月5日、COVID-19での緊急時に対応を早めるため、現行移民法(Immigration Act 2009)を暫定的に修正する法案(Immigration (COVID-19 Response) Amendment Bill)を提出しました。この法案は、スピード可決される見込みで、早ければ5月15日に施行され、その後、関係当局からこの法律に基づいた方針が発表される予定です。まだ国会で審議中ですので、現時点分かっている内容をご参考程度に紹介させていただきます。

はじめに、現行の移民法は、基本的に個別の状況に基づいた審査制度となっており、非常に限られた権限しかなく、柔軟にかつ包括的に対応できる法的枠組みがありませんでした。今回のような国家緊急事態宣言が出され、NZ国内に約350,000人いるとされる暫定ビザ保持者(ワーク、学生、観光など)が、COVID-19による影響でビザ条件を変更せざるを得ない状況に置かれた場合であっても、基本的にVariation of Condition(ビザ条件変更)の申請が必要となります。しかしながら、現実的に、移民局の稼働率は、Level 3で20%、Level 2になっても50%ほどをされており、これらに加えて、COVID-19で優先順位の高い新規ビザ案件、すでに申請されていた各種ビザの累積残務を処理できるキャパシティがありません。そこで、NZ政府として、移民法を暫定的に修正し、特定のビザ保持者の条件を包括的に変更できるような制度を整えようとしています。

この法案の目的ですが、上記で述べたように個別審査のままでは移民局の処理業務が追い付かず、現行法制度そのものが意味をなさなくなってしまうこと、また、この法案は1年間の期間限定とされていることの2点から、この緊急事態の下では合理的な動きであると考えています。

なお、この法案の下で、移民大臣が権限を行使すると、特定クラスに該当するビザ保持者の条件を包括的に修正、変更、キャンセルなどが可能になるようです。下記のような、事例が取り上げられていました。

  • 特定の雇用主の下で働くワークビザ保持者(Essential Skillsなど)へ、雇用条件を緩和し、雇用主や地域に縛られず、柔軟に就労ができる措置
  • NZ国外からビザを申請をされて承認されたが、NZへ渡航が出来なくなってしまった方へ、最大6カ月間のビザ期限の延長措置
  • 病気などが理由でビザ申請が出来なかった方へ、ビザを認める措置
  • ビザ申請で必要な資料をすべて集めることが出来ない方へ、申請資料の一部免除措置
  • 特定のカテゴリーの新規ビザや永住ビザのEOIなどの申請受付を、最大3か月間延期措置

この法案が可決され、NZ政府から方針が発表され次第、報告させていただきます。

小規模ビジネス救済、1年間無利子ローンが5月12日より開始

2020年5月8日

2020年5月12日赤字部分更新

12週間分の従業員の給料を補助する政府からの救済「COVID-19 Wage Subsidy」を3月提供時に迅速に申請した企業は、6月中頃には、その補助金を使い果たす事を見込み、多くのビジネスが未だにフル活動でビジネスを再開できない中、政府は新たなローンスキームを発表しました。

対象は、コロナウィルスで打撃を受けた従業員50人以下の小規模ビジネスです。政府は、ビジネスを継続するために不可欠な店舗/事務所の賃貸の支払いなど、運営費キャッシュフローを維持すべく、最大で$100,000の1年間無利子ローンの提供を発表し、現在の申請期間は5月12日~6月12日の1カ月間のみとなります。

このスキームの概要

• 貸付額は、全申請企業に提供される$10,000をベースとし、フルタイム従業員一人に対し$1,800を加算し算出される。

• 貸付から2年間は返済を求められないが、1年以内に返済を完了すれば無利子。

• 2年目からは3%の利率が加算されていき、ローンの返済期限は5年。

適格条件はCOVID-19 Wage Subsidy と同等となり、申請ビジネスは、貸付金がビジネスの運営に使用される事などを申請時に宣誓し、政府との正式な契約を結ぶ事となります。
Inland Revenueがこのローンスキームを管理し、貸付額は「COVID-19 Wage Subsidy」の受領額をInland Revenueのサイトで入力する事で瞬時に算出されるシステムのようです。COVID-19 Wage Subsidyと同様、今回のローンスキームも迅速に支払われる事と予測されます。

COVID-19 Wage Subsidy (政府補助金)について

4月16日

 

NZ政府は3月25日にCOVID19への警戒レベルを最高の「レベル4」へと引き上げ、必要最低限の買い出しや、Essential Serviceとされる業種の人の外出を除き、原則として外出禁止(ロックダウン)となりました。

警戒レベルが設定後、ロックダウンへと進む過程で、雇用主とその従業員の生活を保護すべく、政府はビジネス救済対策、「Covid-19 Wage Subsidy」を実行しました。日本人経営者を含む多くのビジネスがこの補助金を申請し、その従業員は受領を受けていると思います。

そこで、今回「Covid-19 Wage Subsidy」に関連して、「税金の処理の仕方」に関してと、「Covid19 Wage Subsidy補助受領者の公表」に関してご案内します。

1. 税金の処理の仕方

この補助金を受領した会社、Solo Trader, Partnership のPartnerが、疑問に思う税金に関しての質問をQ & A形式で税金処理の仕方を紹介します。

  • 受け取った補助金にGSTを支払う必要はありますか ?

A:GSTの対象金ではないので、支払いの必要はありません。

  • 受け取った補助金を収入として処理する必要がありますか?

A: 受け取った補助金はExcluded Incomeとして税金対象外の収入とみなされます。すなわち、この補助金に関しては法人税等の支払いの義務はありません。

  • この補助金を含む賃金の支払いの際、PAYEの差し引きはどうしたらよいですか?

A: 通常の賃金の支払いと同じように、PAYE, Kiwi Saver、Student Loanなどを差し引いて支払ってください。雇用主は、受け取った補助金を従業員へ支払う際、通常の給与と同じ扱いでPAYEの支払い義務があります。

  • では、自営業主(Solo TraderPartnershipPartnerなど)がこの補助金を、個人の給料として受け取る場合の税金処理どうなりますか?

A: 自営業主が、個人の取り分として受け取る場合は、収入があったとみなし、税金対象になります。

2. Covid19 Wage Subsidy補助受領者の公表

政府のMinistry
of Social Developmentは4月6日に「Covid-19 Wage subsidy」補助金を受領したすべての雇用主と、それが申請した従業人の数、受領合計額がサーチできる、公開サイトを発表しました。

https://services.workandincome.govt.nz/eps

その背景としてこのビジネス救済対策は、Covid19蔓延阻止対策中に、雇用主が可能な限り通常の給料の支払いをサポートし、従業員(Sole
Traderや自営業の場合は自身に対して)の最低限の生活を保護するという強い意図があると思われます。これを義務づけるために申請企業名が一般へ情報公開されることへの了承と下記の内容の宣誓を申請者に求めています。

  • 従業員のOrdinary
    Wage 又はSalaryの80%を可能な限り支払う
  • もしそれが不可能であれば、受け取った救済金全額を従業員に支払う。

今回の公表には、ビジネス救済対策、「Covid19
Wage Subsidy」の透明性を第一とし、上記の宣誓にもかかわらず、補助金を受け取りながら賃金を支払わない雇用主を阻止する意図があります。

雇用主がWage
Subsidyを受け取ったかどうかを従業員がサーチする際の注意点:

  • Trading nameやCompany Nameでサーチする事。
  • Trading nameとは、企業が一般に知られれている名前 (例:飲食業であれば顧客に知られている店名など)
  • Company NameとはNZの会社登録があれば、Company
    Officeへの登録会社名(ASB
    Service Limited など)