フラットメイトがボンド返却してもらえない(2018年11月)

質問

フラットでモノを壊したりしていないし、特に目立った傷なども残していないのに、ボンドを返してもらえません。この国の賃貸ルールがわからず、契約書などもサインしていませんでした。この場合、ボンドを返してもらうのは無理ですか?

回答

はじめに、テナントとフラットメイトの違いが重要ですので触れておきたいと思います。

前者はResidential Tenancies Act (RTA法)という法律の下でランドロードと正式契約を交わした人であり、同法によりランドロードとテナントの双方に義務と権利が生じます。具体的には、ランドロードは賃貸契約書の作成やボンドの払い戻し手続きなど、テナントは期日通りに賃貸料を納める義務などがあります。そして、双方で争いが生じた場合、Tenancy Tribunalというテナントに関する問題を扱う専門機関に提訴し解決を図ります。

これに対して、フラットはカジュアルな形での賃貸契約であり、ランドロードが住んでいる家の同居人として部屋を借りる契約(ホームステイ等)、もしくはテナントとしてすでに契約している他の同居人との契約などが一般的です。ここでのポイントは、フラットは法的な権利が曖昧であり、前述のRTA法ではカバーされていないため、何か問題が発生した場合、Tenancy Tribunalを利用することが出来ません。

今回のケースですが、同じような理不尽な状況に置かれたことがある方もいらっしゃると思います。まずは、手紙、メール、電話など出来る手段で相手にプレッシャーをかけることが大事です。それで解決が出来れなければDispute Tribunalという簡易的な係争全般を取り扱う機関に提訴することは可能です。この場合、客観的な証拠が重要となりますが、フラットの場合、契約書を書面で交わしていない場合が多いと思います。ただし、そこに住んでいたという事実とそれを客観的に証明できるもの(ボンドやレントの銀行記録、同居人とのメールなど)があれば、有効なフラット契約であったとみなされて、ボンド返却の決定が下される可能性はあります。

すでにフラットとして同居し契約書をお持ちでない方、もしくは今後フラットとして入居を予定される方は、Tenancy ServiceのWebsiteからフラット用の契約書フォーマットがダウンロードできますので、同居人とご相談の上で、書面で契約を交わしておき、ボンドについては相手の署名と金額の入ったレシートを入手されておくことをお勧めいたします。

テナントの保護が強化された新しい法律(2022年5月)

ニュージーランド政府は住宅賃貸法(Residential Tenancy Act 1986)の見直しを行い、近年の賃貸状況を反映させた住宅賃貸改正法(Residential Tenancy Amendment Act 2020)が執行されています。

ニュージーランドの不動産価格は高騰値の記録が続き、それに影響され、賃貸をする人口がかつてないほど増えました。そこで、政府は現在の賃貸の特性などを考慮し、テナント側に適度な保護を与える法律に改正しました。

初めにフラットメイトとテナントの違いについて留意しておきます。フラットメイトは、ランドロードを介さず(ランドロードと一緒に住んでいる場合もありますが)、既にフラットに住んでいるテナントと賃貸契約された方のことを言います。テナントはランドロードと正式に賃貸契約(Tenancy Agreement)を交わした人で、Residential Tenancies Act (RTA法)の対象になります。

改正法以前の法律では、「No Cause Termination」という、ある一定の条件下でNoticeをだせば、理由をなしに賃貸契約を解除できましたが、新しい法律ではそれができなくなりました。今後は、大家から解約をを求める為には、主に以下の根拠をテナントに提示している場合に限られます。

  • 大家又は大家の家族が、物件に住む場合 - 63日Notice
  • 物件売却を予定している場合  ― 90日Notice
  • 5日以上の賃料延滞を90日以内に3回行い、3回ともテナントへ通知している場合、裁判所(Tenancy Tribunal)に解約申請が可能
  • 反社会的行動を90日以内に3回行い、3回ともテナントへ通知している場合、裁判所(Tenancy Tribunal)に解約申請が可能

それ以外の重要な変更には:

  • 賃貸料の値上げは、賃貸契約開始後又は最後の賃貸料の値上げが行われた後、12カ月に一回のみ。
  • 賃貸に大きな損傷を与えないMinor Changeに対し、基本費用はテナントの実費になるが大家は不合理に反対する事ができない。例えば、テナントから大家へ室内の壁の色を変更したいという要望があった場合、色の変更は家に損傷を与えない為、大家は反対することができない。だがペイントの色に問題があると考える場合は、大家はテナントが退去する際に元の色に戻すことを要求できる。
  • 大家又はエージェントがテナント募集の広告内に賃料を明確に表示する義務が課せられた。

以上のような変更がなされましたが、その背景には長年の賃貸を余儀なくされるテナントへ、賃貸物件でも「Home」という認識で継続できる住居の確保が意図されいるようです。