Migrant Action Trust 活動のご紹介

西村 達男

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お世話になっています、Migrant Action Trust (MAT) の西村達男です。前号でご掲載いただきました通り、現在MATでは、ニュージーランドにお住まいの日本人の方向けに、専門家や政府機関、NGOなどにご協力いただきながら、セミナー・ワークショップを開催させていただいています。さて、今号では、西村広報部長より、私たちがそれ以外にどのような活動をしているのか、事例をあげて紹介するようにとのお話をいただきました。貴重な機会をありがとうございます。

MATは、2003年に設立されたオークランドのNGO(Charitable trust)です。「移民の国」であるニュージーランドでは、政府がSettlement Support New ZealandやAuckland Regional Migrant Servicesなどを通じて移民サポートを主導していますが、私たちMATは移民で成り立っているチームとして、一人ひとりのニーズに応じたサービスを提供すること、「移民同士の助け合い」を推進することをモットーに、様々なサポートプログラムを展開しています。

■ Work to Residenceビザの有効期間 ■
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ニュージーランドの永住権(技能移民部門)を申請した人が、「将来この国に貢献できるポテンシャルがあるが、現在雇用されていない」といった理由で判断を先送りされた場合、「Work to Residenceビザ」で一定期間滞在して仕事探しができることはご存知でしょうか?(※雇用が決まっている人に発行される「Work to Residenceビザ」とは別のものです。)最近は移民法改正のせいか目立たなくなりましたが、数年前までは、アジア各国からこのビザで渡航してきている人は相当数見られました。
このタイプの「Work to Residenceビザ」の有効期間は現在、9ヶ月間です。つまり、ニュージーランドに来て9ヶ月以内にジョブオファーをもらえれば永住権、さもなければ帰国・・・というルールです。それが実は、6年前までは有効期限がたった6ヶ月でした。この6ヶ月という期間ですが、当時、政府のウェブサイトで一般の移民向けに「技能職を見つけるのには通常半年以上かかることを覚悟すべき」という記載があったことからもわかるように、大変厳しいものでした。
そこで、MATはビザ条件の改善を求める関係者の意見を集約するため大規模なフォーラムを開催、移民局に請願書を提出しました。その努力が実り、2007年に、Work to Residence Visaの有効期間は9ヶ月間にまで延長され、それが今でも適用されています。この他にも、永住権申請中に仕事を失った人に対する救済措置の必要性についても、MATは移民局に意見を具申しています。

■ 仕事探し・キャリアサポート ■
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移住を成功させるために一番大切なものは何か・・・?すべての方にあてはまる正解はないと思いますが、MATは、その答えは「スキルに見合った、やりがいのある仕事を持つこと」であると考えています。生活の土台となる「仕事」が充実したものでなければ、他の面にも影響が及びやすくなります。そこでMATは長らく、ニュージーランド流の仕事探しやキャリアアップの方法をお伝えするワークショップやサポートグループを開催・組織してきました。
実は私も、2011年の1年間、オークランドの公立図書館に定期的に出向き、仕事探しサポートグループを担当させていただきました。具体的には、世界各地から来てニュージーランドでの就職を目指す方々に、CVやカバーレターの作成をお手伝いさせていただいたのですが、その中で感じたことは、キウィ流の仕事探しをするためには、母国でなじんできた考え方を大きく変える必要がある、ということです。そのことを理解し、踏まえて行動するだけでも、移民が本来持っているスキルを生かせるチャンスは随分広がると思います。

■ コミュニティグループの活動支援 ■
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200余りの異なった民族が一つに暮らすニュージーランド。この国で、同じ出身国の仲間同士で交流したり、自文化を次世代に継承したりできる「コミュニティグループ」は、移民にとって欠かすことのできない存在であると言えるでしょう。MATでは、そういったコミュニティグループが本来の活動に専念できるよう、事務作業(例えば、Trust Deedの作成、プロジェクトプラン作り、助成金申請書作成、会計など)を支援したり、ミーティングルームや事務機器を共用していただけるというサービスを提供しています(MATのメンバーとなっていただいたグループのみ)。現在、10余りのコミュニティグループがMATのメンバーとなっていますが、今回は、そのうち2つのグループとその活動をご紹介させていただきます。

【Chinese Action Network Bridging Trust (CAN-B Trust) 】 New Lynnを拠点とする中国出身者のグループです。ご存知のように、中国人コミュニティでは高齢の親御さんをニュージーランドに呼び、二世代、三世代で暮らす家族が多くなっています。そのような場合、上の世代の方々は、英語の問題などで、メインストリームのサービスをあまり利用しないという問題が起こっています。そこでCAN-B Trustは、Waitemata District Health Boardなど医療サービス提供者と連携。通訳などのサポートを含めながら、高齢の方でも医療サポートをフルに利用できるように便宜を図ることで、コミュニティの健康維持・促進に尽力しています。 【ONKOD Somali Youth Development Inc】 ソマリアからの難民として、主に1990年代から2000年代前半にかけて、多くの家族がニュージーランドに移住しています。ソマリア出身者のコミュニティグループの一つ、ONKODでは、2年前から子供向けソマリ語教育プログラムを開始。現在、Wesley Community Centreで毎週日曜日、3時間のソマリ語クラスを開き、毎回約20名の子供たちが参加しています。「英語ができない両親や祖父母を通訳で助けられるように」、「祖国に帰国したときに親戚と話が通じるように」などといった具体的な目標を持って、子供たちはソマリア語の学習に励んでいます。

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以上、駆け足でしたが、MATの活動内容をご紹介させていただきました。いずれかのトピックにご興味をお持ちいただけましたら、下記のMATのウェブサイトにニュースレターが掲載されていますので、ぜひご参照ください。
最後に、日本人の方向けのセミナー・ワークショップについて・・・これから来年の前半にかけて、「永住権申請(技能移民カテゴリー)」、「家計管理・保険」、「英語」、「ライフスキル」などのトピックのセミナーを開催させていただく予定です。また、今年の年末にはオークランドの日本人コミュニティについて意見を交換し合うミーティングも開催する予定ですので、ご関心のある方は、ぜひ下記までお問い合わせください。

【連絡先】 Migrant Action Trust 担当:Tatsuo Email: tatsu.migrantaction@xtra.co.nz
Phone: 09-629-3500 / Website: www.migrantactiontrust.org.nz

この原稿はオークランド日本人会会報2012年10/11月号に掲載したものに一部修正を加えました。