テナントの保護が強化された新しい法律(2022年5月)

ニュージーランド政府は住宅賃貸法(Residential Tenancy Act 1986)の見直しを行い、近年の賃貸状況を反映させた住宅賃貸改正法(Residential Tenancy Amendment Act 2020)が執行されています。

ニュージーランドの不動産価格は高騰値の記録が続き、それに影響され、賃貸をする人口がかつてないほど増えました。そこで、政府は現在の賃貸の特性などを考慮し、テナント側に適度な保護を与える法律に改正しました。

初めにフラットメイトとテナントの違いについて留意しておきます。フラットメイトは、ランドロードを介さず(ランドロードと一緒に住んでいる場合もありますが)、既にフラットに住んでいるテナントと賃貸契約された方のことを言います。テナントはランドロードと正式に賃貸契約(Tenancy Agreement)を交わした人で、Residential Tenancies Act (RTA法)の対象になります。

改正法以前の法律では、「No Cause Termination」という、ある一定の条件下でNoticeをだせば、理由をなしに賃貸契約を解除できましたが、新しい法律ではそれができなくなりました。今後は、大家から解約をを求める為には、主に以下の根拠をテナントに提示している場合に限られます。

  • 大家又は大家の家族が、物件に住む場合 - 63日Notice
  • 物件売却を予定している場合  ― 90日Notice
  • 5日以上の賃料延滞を90日以内に3回行い、3回ともテナントへ通知している場合、裁判所(Tenancy Tribunal)に解約申請が可能
  • 反社会的行動を90日以内に3回行い、3回ともテナントへ通知している場合、裁判所(Tenancy Tribunal)に解約申請が可能

それ以外の重要な変更には:

  • 賃貸料の値上げは、賃貸契約開始後又は最後の賃貸料の値上げが行われた後、12カ月に一回のみ。
  • 賃貸に大きな損傷を与えないMinor Changeに対し、基本費用はテナントの実費になるが大家は不合理に反対する事ができない。例えば、テナントから大家へ室内の壁の色を変更したいという要望があった場合、色の変更は家に損傷を与えない為、大家は反対することができない。だがペイントの色に問題があると考える場合は、大家はテナントが退去する際に元の色に戻すことを要求できる。
  • 大家又はエージェントがテナント募集の広告内に賃料を明確に表示する義務が課せられた。

以上のような変更がなされましたが、その背景には長年の賃貸を余儀なくされるテナントへ、賃貸物件でも「Home」という認識で継続できる住居の確保が意図されいるようです。

 

職場の健康および安全に関する法律(Health and Safety at Work Act 2015)施行後の個人責任に及ぶ判例について(2021年10月)

2016年4月4日に職場の健康および安全に関する法律(Health and Safety at Work Act 2015:HSWA法)の施行から6年が経過しました。施行後、同法上での判決ではこれまで法人のみが刑罰の対象とされておりましたが、2021年10月にはじめて個人責任にまでおよぶ判決が出ました。

予備知識として、HSWA法は以前のWork Safe法に代わって、ニュージーランド国内の職場環境における健康維持や安全管理を向上させる目的で制定されました。旧法からの変更点として、法人に対する最大罰金刑の大幅引き上げ(50万ドル→300万ドル)、また法人の監督責任者に対する個人罰(最大禁固5年、罰金60万ドル)が導入され、業務を行う個人・法人への法的な安全責任が厳しくなりました。

HSWA法においてはじめて個人責任にまでおよぶ判決の事の顛末は、プレスマシーンを取り扱う企業の従業員が操作を誤った結果、右手の指を2本失う事故が起こりました。これにより、企業側に$120,000の罰金刑および被害者への$30,000の賠償金、そして企業の取締役個人に対して$35,000の罰金刑が科せられる判決となりました。

安全監督当局(Work Safe NZ)の捜査によると、プレスマシーンに適切なガードが無く、緊急停止ボタンもついていなかった、さらに、このプレスマシーンには以前にも同様の問題が発生していたが、それを社内でリスクとして共有していなかった。そして、従業員への書面での研修記録も見当たらなかった。加えて、この企業には過去に従業員が怪我をしたことによる過去二度の有罪歴があり、安全監督当局により職場の安全性について3つの是正勧告がまさに出されていたところでした。安全監督当局は、上記の度重なる職場への安全の配慮が見直されてこなかったことを重く見て、法人だけではなく取締役個人へも起訴し、それが裁判においてはじめて認められた判例となりました。

今回の罰則の対象となった企業はプレスマシーンという特殊な機械ではあるため、この記事の読者の方には自分には関係ないと思われるかもしれません。ただ、これを皆さんの会社にある他の設備に置き換えてみると、より身近に感じるのではないかと思います。特に、製造、工場、倉庫などで勤務されている方は、客観的に周りを見ると潜在的なリスクが沢山ある事に気が付かれるはずです。そして、特に雇用主の方は、それらのリスクが認識、共有されているか、業務にかかわる全員が適切な研修を受けているか、それらが書類として保管され、マニュアル化されているか、などを今一度、ご確認することをお勧めいたします。

容姿による即日解雇通告(2022年10月)

質問

レストラン勤務の20歳です。ワーホリ生活を楽しもうと髪をグリーンに染めて出勤したところ、オーナーからそんな色だと不快と感じるお客様がいるので、常識的な容姿でなければ雇用継続は難しいと言われました。私は髪を染め直すのは嫌だと言い、話合いの末、即日解雇されてしまいました。納得がいかないので、アドバイス下さい。

回答

まず一般的に、雇用主が従業員を解雇する場合、書面通告を何度か行うなど、一定の手順が義務とされております。もし、解雇手順に誤りがあり、その事実が雇用調停所で争われて、雇用主側の不当解雇とみなされた場合、従業員へ慰謝料等を支払う決定が下されます。

この一般的な解雇手続とは別に、事前通告なしの解雇(Dismissal Without Notice)があり、今回の質問者様は、こちらに該当すると思われます。この即日解雇が正当化される主な状況は、従業員が重大な不正行為(Serious Misconduct)を行った時に限られており、これらの不正行為の種類は、多くの場合、雇用契約書に記載されています。分かりやすい例としては、暴行や窃盗などの犯罪が挙げられますが、中には社内規定に著しく違反、会社の指示に従わなかった場合なども含まれることがあります。

接客業であれば、容姿についてある程度の社内規定を設けるのは一般的で、かつ指示に従わなかったという点で、雇用主は即日解雇に至ったのではと思います。しかし、雇用主は、即日解雇を行う前に、従業員が重大な不正行為をしたか判断するためのフェアプロセスを実施する必要があります。質問者様は、解雇直前に話合いをされたようですが、即日解雇である状況のため、これがフェアプロセスであったのか疑問が残ります。加えて、髪の色について、赤はOK、緑はNGのような細かい規定を設けている会社はほとんどないと思いますので、単に雇用主の主観で緑色が相応しくないから解雇というのは、即日解雇の理由としては不適切である可能性が高いです。実際に、髪を青に染めたスーパーマーケットのパートタイム店員が容姿が原因で解雇されるケースがありました。結果、雇用主のフェアプロセスが不適切だったことが雇用調停所で明らかになり、約$10,000の慰謝料等を従業員へ支払う決定が下されています。

最後に、質問者様の対応として、ご自身もしくは弁護士などの代理人が、即日解雇の通知を受けた日から起算して90日以内に解雇が不当であったという内容の書面(メールなど)を雇用主へ送ることで、まずは今回のクレームを法的な土台にのせることができます。

COVID-19ワクチンと雇用の問題

COVID-19のワクチン接種は、雇用、労働環境での安全性や、プライバシーに問題を投げかけています。

NZでは、雇用者は労働者に対して容易にワクチン接種ができる環境を設けるように下記のように促しています。

雇用主は

  • 労働者は勤務時間内に、有給休暇の消化をしたり減給されることなくワクチン接種ができる
  • ワクチンについての国からの情報を提供する
  • Ministry of Health か a District Health Boardに職場でのワクチン接種を求められた場合、それに従う

以下で、いくつかの質問に答えます。

Q. 雇用者は労働者にワクチン接種を強制できますか?

A. いいえ。国からワクチン接種の命令がされていたりCOVID-19に感染する可能性が高い場合のみ、特別な役割をワクチン接種済の労働者に求めることができますが、このような職種はNZではまれです。

 

Q. ワクチン接種が必要な職種な場合、雇用者はワクチン接種をしていない労働者の労働条件や配置を変更することはできますか?

A. 雇用者は労働条件の変更の前に、労働者がその労働条件の変更(勤務地、時間、職務内容、感染リスクの低いポジションへの異動)に同意できるか話し合わなければいけません。また、労働者が妊娠、健康問題などでワクチン接種が不可能な場合、ワクチン接種を延期して、一時的なの代替手段に同意しなければなりません。

 

Q. もし労働者がワクチン接種を拒否した場合、雇用者は労働者を解雇できますか?

いいえ、解雇は他の解決策がない場合の最終手段です。まず、雇用者はその事業内にワクチン接種者済みの労働者でなければ遂行できない業務があるかどうかをCOVID-19感染・拡散リスクを含め判断します。そして業務の感染リスクが高く国からの接種命令がある場合、雇用者は労働者に対し、法的相談、永久的・一時的な勤務条件の変更、様々な休職種類への同意、事業体系・勤務体系の改革、心身不全による勤務不能の問題等を考慮してから解雇について考える必要があります。法的な解雇手続きと法律家による相談なしに解雇することは、雇用の機関により不当解雇と判断されて結果的に経済的に大きな打撃となり得ます。

 

Q. 雇用者は、労働者のワクチン接種が必要かどうかをどのように調べるのですか?

A. 国からワクチン接種命令が出ていないが、ワクチン接種の必要性が考えられる場合には、まず雇用者と労働者がCOVID-19の感染可能性や感染リスクを最小限に食い止める方法を話し合わなければなりません。もし「労働者が勤務中にCOVID-19に感染する可能性」が高く、なおかつ「他人に感染を拡散する可能性」が高い場合は、その業務はワクチン接種済の者によって遂行される必要性が高いです。

 

Q. ワクチン接種が必要な職種の労働者が接種をしていない場合、雇用者が労働者に年次休暇やその他の休暇の取得を要求することはできますか?

A.  年次休暇やその他の休暇の取得は双方が合意した上のものであり、雇用者が合意なしに強制はできません。もし合意が不可能な場合、まだ年次休暇の残日数があれば、雇用者は労働者に対して最低14日前の書面通達によって年次休暇の取得を要求できます。しかし、もし雇用者が労働者に対して無給休暇の取得を要求した場合は、違法に休職させているとみなされる場合があります。

 

Q. もし労働者にワクチン接種が必要な場合に、労働者がワクチン接種の証明を拒否した場合はどうすればいいですか?

A. まず、ワクチン接種するのに障害となり得ることを排除することを考えます(勤務時間外にワクチン接種するのが難しい場合等)。もし国からワクチン接種を命令されているのに、労働者が接種を拒否したり、接種の証明を拒否した場合は、その労働者はワクチン未接種者とみなされ、雇用者はその労働者に対して彼らの雇用においてそれがどういう意味かを説明する必要があります。

COVID-19 Resurgence Wage Subsidy について

8月21日

8月14日、NZ政府はオークランドのCovid-19の警戒レベルを3に、その他の地域のレベルを2に引き上げることを発表しました(8月26日未明まで)。オークランドに関しては、必要最低限の買い出しや、Essential Serviceとされる業種の人の外出除き、外出禁止(ロックダウン)となりました。ただ、最高レベル4の時とは違い、飲食店などは非接触販売(デリバリーやテイクアウェイ)の形で営業を行うことが出来ます。
8月17日、今回の2週間の警戒レベルの引き上げによりビジネスの影響を受けた雇用主向けに新たな政府補助(Resurgence Wage Subsidy)が発表されました。この政府補助は8月21日午後1時から9月3日未明(午後11時59分)まで申請することが出来ます。
Resurgence Wage Subsidyは、これまでの政府補助であるWage Subsidy(12週間)およびWage Subsidy Extension(8週間)とほぼ同様の条件となっております。まず、申請の際、雇用主が対象となる従業員の情報を当局へ提供し、その後、一括して雇用主が補助金を受け取り、各従業員へ補助金を渡す流れとなります。
Resurgence Wage Subsidyの対象となる要点を説明いたします。
1. NZ企業(NGO、Contractor、Solo Traderなど含む)であること
2. NZ国内で営業活動を行っていること
3. 従業員がNZで働く権利があること(Work Visaの承認待ちの人は対象外)
4. 売上の減収を最大限軽減する努力をしたこと
5. 2020年8月12日から9月10日の30日間のうち、14日間で2019年の同期間と比較して40%以上の売上減があること
6. 補助金を受け取っている2週間は、申請に含めた従業員の雇用を維持すること
7. 別の補助金(Wage Subsidy, Wage Subsidy Extension, Leave Support Scheme)を重複して受け取っていないこと(すなわち、Resurgence Wage Subsidyを申請する時点で、まだWage Subsidy Extensionの期間が終わっていなければ、Extensionの期間中はResurgenceの申請はできません。)
詳細は、下記のWork and IncomeのWebsiteをご確認ください。
https://www.workandincome.govt.nz/covid-19/resurgence-wage-subsidy/who-can-get-it.html#null

ワークビザ審査基準の変更について

2020年8月20日

2020年7月27日以降に申請されるワークビザについての基準について説明いたします。

a. 時給中間値による二つの基準(Higher Paid / Lower Paid)
今後、3年のワークビザを取得できるかどうかの基準は、NZ国内の時給中間値(2020年8月時点:$25.50)より多くもらっているかどうかにより審査されます。これまで、3年のワークビザの基準は$21.25以上でしたので、給与の基準がかなり上がったことになります。なお、7月26日以前までに申請されてまだ結果の出ていない分については、引き続き以前の基準で審査が継続されます。

b. ANZSCOの職業リストによる審査の廃止
これまで、申請する業種は、ANZSCOの職業リスト上での資格、実務経験年数、Job Descriptionなどが満たされるかどうかで審査されていたものが、今後ワークビザにおいてANZSCOは使用されないことになりました。ANZSCOのスキルレベル(1から5)によって、3年以上のワークビザ取得が出来ていましたが、上記で述べた通り、今後は時給中間値のみが考慮される形となります。したがて、例えば、ANZSCOレベル2に該当するシェフの場合、時給が$25.50に満たない限り、3年のビザを取得することが出来なくなってしまいます。

なお、永住権(Skilled Migrant Category)では引き続きANZSCOは審査要件として使用されます。

c. 時給中間値未満(Lower Paid)の ワークビザについて
時給中間値に満たない申請者には、本来1年のビザが発行される予定でした。しかし、今回のCOVID-19による影響の政策により、2022年1月までは最大6カ月間しか発行がされないことになったため、半年ごとの更新が必要となります。また、Lower Paidの条件のままでビザを更新し続けて3年を経過すると、一旦NZを出国しなければならず、その後12カ月間はビザを申請することが出来なくなります(Stand-down period)。

二つ目は、雇用主は時給中間値未満の職業をサポートする場合、Work and Income New Zealand (WINZ)からのSkills Match Reportの提出が必須となります。以前は、ANZSCOのレベル4と5に該当する職業のみ必要とされていました。

三つ目は、Lower Paidのワークビザ保持者であっても、パートナーの観光ビザをサポート出来るようになりました。ただし、パートナーのワークビザをサポートするためには、Higher Paidの条件が必要となります。また子供については、時給が中間値未満であっても年収$43,322.76以上があれば、Dependent Childrenとして申請に含めることが出来ます。

COVID-19に対応する移民法修正法案について

2020年5月8日

NZ政府は、2020年5月5日、COVID-19での緊急時に対応を早めるため、現行移民法(Immigration Act 2009)を暫定的に修正する法案(Immigration (COVID-19 Response) Amendment Bill)を提出しました。この法案は、スピード可決される見込みで、早ければ5月15日に施行され、その後、関係当局からこの法律に基づいた方針が発表される予定です。まだ国会で審議中ですので、現時点分かっている内容をご参考程度に紹介させていただきます。

はじめに、現行の移民法は、基本的に個別の状況に基づいた審査制度となっており、非常に限られた権限しかなく、柔軟にかつ包括的に対応できる法的枠組みがありませんでした。今回のような国家緊急事態宣言が出され、NZ国内に約350,000人いるとされる暫定ビザ保持者(ワーク、学生、観光など)が、COVID-19による影響でビザ条件を変更せざるを得ない状況に置かれた場合であっても、基本的にVariation of Condition(ビザ条件変更)の申請が必要となります。しかしながら、現実的に、移民局の稼働率は、Level 3で20%、Level 2になっても50%ほどをされており、これらに加えて、COVID-19で優先順位の高い新規ビザ案件、すでに申請されていた各種ビザの累積残務を処理できるキャパシティがありません。そこで、NZ政府として、移民法を暫定的に修正し、特定のビザ保持者の条件を包括的に変更できるような制度を整えようとしています。

この法案の目的ですが、上記で述べたように個別審査のままでは移民局の処理業務が追い付かず、現行法制度そのものが意味をなさなくなってしまうこと、また、この法案は1年間の期間限定とされていることの2点から、この緊急事態の下では合理的な動きであると考えています。

なお、この法案の下で、移民大臣が権限を行使すると、特定クラスに該当するビザ保持者の条件を包括的に修正、変更、キャンセルなどが可能になるようです。下記のような、事例が取り上げられていました。

  • 特定の雇用主の下で働くワークビザ保持者(Essential Skillsなど)へ、雇用条件を緩和し、雇用主や地域に縛られず、柔軟に就労ができる措置
  • NZ国外からビザを申請をされて承認されたが、NZへ渡航が出来なくなってしまった方へ、最大6カ月間のビザ期限の延長措置
  • 病気などが理由でビザ申請が出来なかった方へ、ビザを認める措置
  • ビザ申請で必要な資料をすべて集めることが出来ない方へ、申請資料の一部免除措置
  • 特定のカテゴリーの新規ビザや永住ビザのEOIなどの申請受付を、最大3か月間延期措置

この法案が可決され、NZ政府から方針が発表され次第、報告させていただきます。

小規模ビジネス救済、1年間無利子ローンが5月12日より開始

2020年5月8日

2020年5月12日赤字部分更新

12週間分の従業員の給料を補助する政府からの救済「COVID-19 Wage Subsidy」を3月提供時に迅速に申請した企業は、6月中頃には、その補助金を使い果たす事を見込み、多くのビジネスが未だにフル活動でビジネスを再開できない中、政府は新たなローンスキームを発表しました。

対象は、コロナウィルスで打撃を受けた従業員50人以下の小規模ビジネスです。政府は、ビジネスを継続するために不可欠な店舗/事務所の賃貸の支払いなど、運営費キャッシュフローを維持すべく、最大で$100,000の1年間無利子ローンの提供を発表し、現在の申請期間は5月12日~6月12日の1カ月間のみとなります。

このスキームの概要

• 貸付額は、全申請企業に提供される$10,000をベースとし、フルタイム従業員一人に対し$1,800を加算し算出される。

• 貸付から2年間は返済を求められないが、1年以内に返済を完了すれば無利子。

• 2年目からは3%の利率が加算されていき、ローンの返済期限は5年。

適格条件はCOVID-19 Wage Subsidy と同等となり、申請ビジネスは、貸付金がビジネスの運営に使用される事などを申請時に宣誓し、政府との正式な契約を結ぶ事となります。
Inland Revenueがこのローンスキームを管理し、貸付額は「COVID-19 Wage Subsidy」の受領額をInland Revenueのサイトで入力する事で瞬時に算出されるシステムのようです。COVID-19 Wage Subsidyと同様、今回のローンスキームも迅速に支払われる事と予測されます。

政府と銀行が提携、コロナウイルスで打撃をうけたビジネスや家主へのサポートパッケージ

2020年4月20日

政府は3月26日のロックダウンに入る前に、既に打撃を受けている雇用主や従業員を救済すべく、Wage Subsidyの提供を開始しました。そして、その申請に早急な支払いおこない、4月17日現在で、$10 Billionを費やし、多くの市民の生活保護を行いました。

今回ご紹介する二つサポートパッケージの「Business finance guarantee scheme」と「Mortgage Holiday Scheme」は、こちらも政府主導で開始され、主にビジネスの運営やキャッシュフローを長期的に保護するためのものであり、Wage Subsidyと併用することができます。Business finance guarantee scheme は80%のリスクを政府が保証し、最大$6.25 Billionのローンを銀行と提携し成立させたサポートパッケージとなります。

最大で$500,000のローンを受ける事のできる「Business finance guarantee scheme」に関して

このスキームは、年間売上が$250,000~$80,000,000 のNZをベースにする中小企業が利用できるローンスキームで、NZの登録銀行すべてが、提供銀行として参加しています。このスキームで借りれる最高貸付額は$500,000と設定されていますが、個々の銀行はコロナウイルス影響を考慮し、独自の査定プロセスを踏み、貸し付け金が決定されます。

銀行からは今までの会計関係の書類を会計士から入手することを求められると思われますので、どこの銀行でもいいとは思われますが、すでに使っておられるある銀行に申し込む事が、ローン査定プロセスである、「信頼」や「業績」などを確認しやすく、申請が前に進みやすいかと考えられます。

このスキームの概要/注意点

  • ほぼすべての職種がこのスキームの対象であるが、農業や、Property Developmentなどは、このスキームでローンを組む事ができない職種の一つ。Excluded activities Listはgov.nzで確認ができる。
  • このスキームで借りた金額は3年以内に全額返済の必要があり、返済できる金額を申し込む事。
  • 2020年9月30日までがこのスキームの申請期限。
  • 銀行により利子や諸条件が事なるので、詳細は銀行に確認する事。

最大で6カ月のローン返済を延期 できるMortgage Holiday Schemeに関して

不動産などを抵当にして銀行に負債のある個人や中小企業が、コロナウイルスの影響で、収入に打撃を受けた際に、元本と利子両方のローン返済額すべてを、最大で6カ月間ストップできるMortgage Holiday Schemeの提供がNZ登録銀行からされる事になりました。

このスキームの最大の意図は、コロナウイルスの影響で月々支払っているローンの返済できない状況に陥った借り手が、住む場所を失わせない事であり、言い換えると、銀行はMortgage Saleで、担保の家を簡単に売却できない、となります。

このスキームを申し込まれる前にご理解頂いたいことは、支払いをストップしている期間も元本残金に対しての利子は加算されていき、利子がその期間「無し」になるわけではない、という事です。すなわち、支払いを再開する際の残金は、ストップする前の残金より増えており、最終的に支払う合計はこのスキームを利用する前より増えるということです。

このスキーム以外の救済案を提示している銀行は多いようですので、もし少額なら返済が可能であれば、「一定期間の元本の返済のみストップし、利子は払い続ける、(元本残金は増加を防ぐ)」、又は、「ローン期間を長くし、月々の返済額を少なくする。」などの救済案を提供しているか、ローンを組んでいる銀行に確認してみる事も可能かと思います。

支払いが厳しなってきたら、まず、銀行のご相談いただき、それらが提供するオプション検討されたら良いかと思います。

 

コロナウイルス(COVID-19) 影響下の商業物件の賃料

2020年4月16日

 

コロナでロックダウン中に、商業物件の賃料は支払うべき?リース契約書(Deed of Lease)の条項27.5をまず確認

大半の事業主は、リース契約を大家とかわし、店舗や事務所を、賃貸されているかと思います。

その事業主の中には、事務所を自宅に移し、Remoteで仕事をこなし、ビジネスにさほど影響を与える事なく、ロックダウンを過ごせる職種もあるかと思います。一方、カフェ、レストラン、美容室などの経営者は、ロックダウン中、収入がゼロとなり、(政府の要請で店舗のアクセスできない)この状況下で、賃料を支払わなくてはならない状況に直面します。

まず確認しなくてはならないことは、大家と交わしたリース契約(Deed of Lease)が最新版のSixth
Edition 2012 (4)かをリース契約書の右上に記載があることと、そのリースの条項27.5“No access in an
emergency”が削除されていない事です。

2011年のクライストチャーチ地震

No access in an emergency の条項が2012年に導入された背景には、2011年のクライストチャーチ地震あります。この災害後、店舗/事務所の大家からの賃貸の救済は、建物の破損が原因でビジネス続行が不可能になったテナントへのみでした。一方、Redゾーンに位置した、破損のなかった店舗は、店舗にアクセスができない状況であるのに、アクセスがきるまでの期間(テナントにより数カ月~数年の間)、法的には賃貸の支払い義務が発生しました。

その後、ニュージーランドのリース契約書のテンプレートを作成するオークランド弁護士協会は、災害(今回のような、Epidemic含む)でアクセスでなかったテナントを救済できる内容に更新したした契約書を発行しました。

Fair Proportionに関して

この条項には「店舗/事務所にアクセスできない期間、通常支払っている賃料のFair
Proportionが割り引かれる。」と記載があります。そこで、このFair Proportionとはどのように確定されるのでしょうか?

例えば、Remoteで営業が継続でき、収入にさほど影響がでなければ、賃料の割引は少ないので、大家はFair Proportionはゼロに近いと主張するかもしれません、一方、ロックダウンのよって全ての収入を奪われてしまったテナントには、割引幅を大きくすることがFairと言えるでしょう。

では、大家側の立場から考えてみましょう。もしテナントが賃料を支払ってくれなければ、ロックダウンのさなかでも物件に付随するMortgageやRatesなどの支払いは行わなくてならず(ただ、6カ月間のMortgage Holidayは申請できるかもしれませんが)、賃料をあてにしている大家は大変困るかもしれません。

Fair Proportionを確定させるためには、まず、大家へアプローチをし、お互いの状況を理解したうえで、納得のゆくFair Proportionを見つける事かと思います。

では、No access in an emergency条項がなければ?

リース契約書でまずその条項の代わる内容が記載されていないかを確認する事をお勧めします。もし該当条項がなかったとしても、交渉ができないわけではありません。

大家には賃料の割引の法的義務はありませんが、大家も、テナントに継続してビジネスを続けてほしいはずです。賃料の支払いが苦で破産されても困るかと思います。

賃料の支払いが難しい状況であれば、まずは大家にアプローチをし、可能な賃料救済がないかを尋ねる事はできます。大家よれば、割引に応じてくれるかもしれませんし、それが難しければ、ロックダウン中の賃料の延期や、分割で支払うなどの提案がされるかもしれません。

賃料の延滞による立退き通告  ルールの変更

注意しなくてはいけない点は、契約書上で支払い義務があるテナントが、賃料支払日に支払いを行わなければ、「延滞」となります。

延滞をすると、大家はテナントに立退き通告を出すことができます。現行の法律でのプロセスは、支払日から10営業日間賃料の支払いがされていなければ、大家は立退き通告を出すことができ、その通告は、10営業日以内に賃料の支払いをしなければ、リース契約がキャンセルされ、立退きを求めることが出来るとされています。

よって、支払日からは最短で20営業日まで延滞となれば、リース契約がキャンセルされる可能性があるという事です。

政府はコロナウイルスで打撃を受けたビジネスを救済すべく、商業物件の賃料の支払いに関するルールの変更案を提供する予定です。この記事の執筆時点ではまだ法律になっていないと言うことです。

それは、立退き通告が出せる、日数を10営業日から30営業日へ伸ばし、さらに、通告で通達する立退きの日数も10営業日から30営業日と伸ばすものです。(支払日か最短60営業日)。ただ、このルールの変更により、差し当たりテナントを立退きから救えますが、リース契約の基づく延滞金や罰金からテナントを救うルール変更は政府からの提供は今現在はないようです。

では、この変更案が執行後、すでに大家からだされた通告の位置づけについてですが、その通告での期間は新しいルールが適用され、支払い期限が伸びる事になると現在は案内されています。(通告から30営業日)

この状況下で、賃料の支払いが困難と予想されれば、大家と早い時期にコミュニケーションをとる事が、商業物件の賃料に関する交渉のKey Pointではないでしょうか。そして、首相のメッセージ‘Be Kind, Be Patient and to look after one
another”を忘れずに、お互い納得のゆく、救済策を練っていく事かと思います。